予防接種(ワクチン)は、人類が長い時間をかけて、命に関わったり、重大な障害を残す感染症を防ぐことに成功した画期的な方法です。江戸時代前後には、結核、麻疹やインフルエンザなどで沢山の人命が失われていたのです。
自分のためだけでなく、家族や身の回りの人に病気を広めないために、予防接種を受けましょう。
2021年2月24日より、日本国内でも9価HPVワクチン(シルガード9)が販売開始となり、当院でも接種可能となりました。
この9価HPVワクチンは、子宮頸がんの原因であるハイリスクHPV(human papilloma virus)の16.18.31.33.45.52.58型、及び、尖圭コンジローマの原因であるローリスクHPV6.11型の侵入を防ぐことで、子宮頸がんと尖圭コンジローマの予防を行うものです。
日本人の子宮頸がんにおける研究で、HPV16.18.31.33.45.52.58型が原因の約90%であり、これらをカバーすることで、より高い予防効果が得られると考えられます。(従来の2価、4価ワクチンがカバーできる16.18型が原因の子宮頸がんは65.7%)
一時期、副反応や健康への不安が取り上げられましたが、その後の研究で、同様の体調不良はワクチンを接種していない方でも同じ割合で起こっていることが分かりました。
世界では既に90か国以上で国策としてHPVワクチンの接種が進んでおり、2006年の接種開始以来約3億回以上の接種が行われています。
子宮頸がんはワクチンで予防できる唯一のがんであり、当院では、すべての女性にワクチン接種を検討していただきたいと思っております。
麻疹も風疹と同様、妊娠中には注意が必要です。妊娠中に麻疹にかかっても、胎児の奇形が増加することはありませんが、麻疹にかかったことがなく、ワクチン接種もしていない女性が、妊娠中に麻疹にかかった場合、陣痛促進剤を投与した時のように、強い子宮の収縮を起こすことがあります。
妊娠初期で麻疹にかかると31%が流産するほか、中期以降でも9%が流・死産、24%が早産すると報告されています。
現在は幼児期に風疹・麻疹の混合ワクチン(MRワクチン)が定期接種化されていますが、1978年前後にうまれた人のワクチン接種率が低いことがわかっており、注意が必要です。
風疹と麻疹のワクチンは妊娠中接種できないため、妊娠する前に予防接種を受けておくことが重要です。妊娠中の予防接種は避け、予防接種を受けてから約2か月は、妊娠を避けるようにしてください。産後は、授乳中でも風疹の予防接種を受けることができます。麻疹ワクチンは2020年9月現在製造終了しており、麻疹抗体の低い方は麻疹風疹混合ワクチン接種となります。
毎年空気が乾燥する冬に流行するため、10月頃から接種を開始します。特に妊婦さんがかかると重症化しやすいため、妊婦への予防接種はむしろ推奨されています。当院では、安全性を考慮して保存剤無添加(チメロサールフリー)のプレフィルドタイプを採用しています。
母子感染によって既にキャリアである人が少なからずいる病気です。
ワクチンで防げる唯一の肝炎です。他人の血液や体液に触れることがある医療従事者や、介護従事者は必ず受けましょう。現在日本では、母子感染を防ぐため、B型肝炎ウイルスをもつ母親から産まれた赤ちゃんには全例、合計3回、ワクチンを接種しています。
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